「帰ると言うから、明日連れて帰ります。ベッドの用意をおねがいします。」そうご家族から連絡を受けたのは、もう夕方でした。余命は3日から1週間と聞きました。準備といっても時間は限られています。ベッドのレンタルだけ手配しました。
ご家族は、「点滴を外すと長くないと言われたけど、自由にしてやりたいと思った」と話されました。医療的な管理を続ければ少し長く生きられるかもしれないーーでも、ご本人の「帰りたい」という気持ちを尊重したのです。
退院の日、ご家族と一緒に自宅でご本人を出迎えました。自宅に入ると、ご本人の表情がふわっとやわらぎ、緊張が解けたのが伝わってきました。笑顔が見えた瞬間、「家に帰ることができて本当によかった」と心から思いました。
それから3日間、ご家族とともに穏やかな時間を過ごし、ご自宅で最期を迎えられました。ご家族も悲しみだけでなく、「家に帰れてよかった」と安堵の笑顔を見せてくださいました。退院前は、「点滴をしていれば、もう少し生きられるから」とずいぶん悩まれたそうです。
在宅の看取りには、ご家族の大きな覚悟が必要です。医療や介護の体制だけでなく、「どう最期を迎えたいか」という気持ちに寄り添うことが大切だと改めて感じました。