父の受診に付き添ったとある日のことです。
病院で父が友人と話をしていました。
その時、父が笑いながらこう言ったのです。
「老いては子に従えだからな。」
思わず私は、「それは私がお父さんに言うセリフだけど・・・・・・」と、心の声がそのまま口から出てしまいました。
父には聞こえていなかったようですが、自分でも苦笑いです。
家族の介護は理屈どおりには行かない
仕事では27年以上ケアマネジャーをしています。たくさんのご利用者、ご家族と関わってきました。
それでも、自分の父親の介護となると葛藤ばかりです。介護が難しい理由の一つは、その人が長年築いてきた価値観に左右されるからです。
父は職人でした。自分が親方として仕事をしてきた人です。
人に指示を出すことには慣れていても、人から指示されることは苦手です。
だから、「こうした方がいいよ」と伝えても、素直に受け入れられないことがあります。
認知症になったから変わったと言うよりも、もともとの性格や生き方が今も残っているのだと感じます。
「どうして分かってくれないの?」
家族の介護をしていると、「こんなに頑張っているのに、どうして噛み合わないんだろう。」そう思うことはありませんか。
そんな時は、介護が始まる前の本人を思い出してみてください。
昔から頑固だった人。人に頼ることが苦手だった人。何でも自分で決めてきた人。
そう考えると、「今だけ特別なのではない」と少し納得できることがあります。
一方で、介護してもらっていることに引け目を感じ、遠慮して自分の希望を言えない方もいます。
それもまた、その人の価値観です。
介護は病気だけを見るものではなく、その人の人生そのものと向き合うことなのだと思います。
離れて暮らしても介護は終わらない
父はグループホームで生活しています。
先日、スタッフの方から連絡をもらいました。「お父さんはおしゃれですね。いつも決まったお気に入りの服ばかり着ておられるので、似たような服を用意していただけませんか。」
ありがたい連絡です。でも、私は少し複雑な気持ちになりました。父は、私が何を買っても「気に入った」「ありがとう」と言う人ではありません。
だから、「本当に必要なのかな」と、心の中でもやもやしてしまうのです。
そんな自分に、「ケアマネなのに」と思うこともあります。
でも、ケアマネジャーである前に、私は娘という立場です。仕事と家族では、気持ちの整理の仕方がまったく違います。
親が施設に入居すると介護は終わったように見えるかもしれません。けれど実際は違います。
衣類の準備、多種多様な手続き、判断すること・・・・。
形は変わっても、親に気をかける毎日は続いていきます。
離れて暮らしていても、親の介護は終わらない。

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