ケアマネジャーとご利用者の出会い
ケアマネジャーがご利用者と始めて出会うきっかけは、地域包括支援センターからの紹介であることが多いです。
地域包括支援センターの担当者と一緒にご自宅を訪問し、ご本人やご家族のお話を伺います。
契約を交わし、生活状況や心身の状態、ご本人とご家族の意向を確認しながら、必要な介護サービスを調整していきます。
これが一般的な居宅介護支援の流れです。
ケアマネジャーの報酬は、基本的にケアプランに基づくサービス利用と給付管理などの業務によって発生します。
しかし、すべての出会いが介護サービスの利用につながるわけではありません。
むしろ、介護サービスを利用することさえ難しい状態になってから、相談が寄せられることもあります。
初回訪問で「在宅は難しい」と感じること
地域包括支援センターの担当者に同行して訪問した際、明らかに在宅生活の継続が難しいと感じるケースがあります。
家の中の環境が整っていない。
食事や服薬の管理ができていない。
日常生活に支障が生じているにも関わらず、ご本人には困っているという認識がない。
認知機能の低下によって、現在の生活状況を正しく認識することが難しくなっている場合もあります。
ご家族は何とか介護サービスを利用してほしいと願っています。
しかし、ご本人は、
「自分のことは自分でできる」
「何も困っていない」
「他人に家に入ってほしくない」
と話されます。
長年続けてきた自分の生活ペースを乱されたくないという思いもあるのでしょう。
ご本人の意思を尊重することは、ケアマネジメントの基本です。
一方で、その生活を続けることによって、生命や健康に危険が及ぶ可能性があるとすれば、簡単に見過ごすわけにはいきません。
ご本人は困っていない。しかし、ご家族は困り果てている。
このような場面に出会うことがあります。
なぜ、ここまで誰も介入できなかったのだろう。
初回訪問を終えた後、考え込んでしまうことがあります。
もっと早い段階で支援につながっていれば、違う選択肢があったのではないか。そんな思いが頭をよぎります。
しかし、ご家族にも生活があります。
仕事、子育て、自分の家庭を守りながら、親の生活を心配してこられたのでしょう。
何度も介護サービスを勧めたのかもしれません。
受診を勧めても拒否され、話し合いをしても平行線だったのかもしれません。家族だからこそ、うまくいかないこともあります。
そして、どうにもならなくなってから、地域包括支援センターに相談されたのかもしれません。
「どうにか助けてほしい」
その言葉を口にするまでに、どれだけの葛藤があったのでしょう。
介護サービスが利用できない。それでも支援は続く。
在宅生活の継続が難しく、介護サービスの利用も拒否される。
そのような場合、施設入所という選択肢を検討することがあります。
もちろん、ご本人の意思や判断能力、生活上の危険性などを確認しながら、関係機関と慎重に進める必要があります。
しかし、施設入所につなぐためには、さまざまな準備が必要です。
ご本人の生活歴、心身の状態、認知機能、日常生活の状況などを整理し、施設に情報提供をするための資料を作成します。
受け入れ可能な施設を探し、電話で問い合わせます。
空室がなければ、また次の施設へ。
空室があっても、ご本人の状態によっては受け入れが難しいこともあります。
必要に応じて、医療機関に診療情報の提供を依頼するための調整を行います。
ご家族に状況を説明し、地域包括支援センターや関係機関とも連絡を取り合います。
一つひとつの作業には時間がかかります。気がつけば、何時間も費やしていることがあります。
それでも、在宅の介護サービス利用につながらず、居宅介護支援費を算定できないケースがあります。
これだけの時間を費やしてもケアマネジャーの事業所には報酬が入らないのです。
報酬が発生しない仕事はボランティアなのか
ケアマネジャーの仕事には、報酬に結びつかない業務が少なくありません。
相談を受ける。情報を整理する。関係機関と連絡を取る。
ご本人とご家族の間に入り、今後の生活について一緒に考える。
どれも専門的な知識と経験が必要な仕事です。
それでも介護報酬の仕組みの中では評価されない業務があります。
事業所の立場から見れば、収入のない仕事に何時間も費やしていることになります。
ケアマネジャー個人が無給で働いているという意味ではありません。
しかし、事業所としては、専門職が行なった支援に対する報酬を得られないのです。
「どうにか助けてほしい」という言葉が忘れられない
初回訪問で出会ったご家族の表情が、脳裏に浮かびます。
切実な思いで相談されたご家族。一方で、生活が成り立たなくなっているにもかかわらず
「自分は何も困っていない」と話されるご本人。
どちらの思いも、簡単には否定することはできません。
ご本人にとっては、住み慣れた家で、これまで通りに暮らすことが何より大切なのかもしれません。
ご家族にとっては、何か起こってからでは遅いという不安があるのでしょう。
ケアマネジャーは、その両方の思いを受け止めながら、安心して暮らせる場所を探していきます。
報酬がないから、ここまでの支援です。
そう言って支援を終えることは出来ません。
地域密着事業所、ケアマネジャーとしての使命があります。
支援の価値は、介護サービスの利用だけでは測れない
ケアマネジャーの仕事は、ケアプランを作ることだけではありません。
ご本人の生活を見つめ、ご家族の思いを受け止め、必要な支援につなぐことも大切な役割です。
介護サービスの利用につながらなくても、施設入所によって安心できる生活環境が整うのであれば、それも支援の成果だと思います。
もちろん、地域包括支援センターや行政など、それぞれの役割を持つ機関との連携は欠かせません。
ただ役割分担だけでは割り切れないことがあります。
誰かが動かなければ、困っている人の生活が変わらない。
その誰かになっているのが、ケアマネジャーであることも少なくありません。
介護サービスにつながらなかったから仕事をしていないわけではないのです。
安心して暮らせる場所を探す。その仕事にも、専門職としての価値があります。
ケアマネジャーの仕事が、介護報酬の算定件数だけでは計り知れないことを知ってほしいと思います。
こうした支援が専門職の善意や使命感だけに支えられるのではなく、適切に評価される仕組みが必要なのではないでしょうか。

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