「施設に入所したのだから、ご家族は安心ですね。」
そんな言葉を耳にすることがあります。しかし、実際にはそう簡単ではありません。
施設にお願いしたからといって、家族の介護が終わるわけではないのです。
「他の利用者さんに迷惑をかけていないだろうか。」「職員さんを困らせていないだろうか。」「面会に行かなければと思うのに、なかなか気持ちが向かない。」
そんな思いを抱えながら毎日を過ごしているご家族は少なくありません。私自身も父がグループホームに入所してから、その気持ちを何度も経験しています。
ある日、スーパーで偶然、施設の職員さんにお会いしました。
「お父さん、元気ですよ。」そんな言葉なら安心できます。
でも、
「帰る、帰ると言っておられますよ。」
そう聞いた瞬間、胸が締めつけられました。「やっぱり迷惑をかけているんだ。」
そんな思いが頭をよぎります。
「こんなことなら家に連れて帰ったほうがいいのではないか。」
そう考えてしまうこともあります。けれど、体調のこと、仕事のこと、自分の生活のことを考えると、自宅で介護を続けることは難しかったからこそ、施設にお願いしたのです。
答えは簡単には出ません。
「これでよかったのだろうか。」
その葛藤は、今も続いています。
ケアマネジャーとして仕事をしていると、ご家族へ帰省をお願いすることがあります。
大切なものを探していただくこと、金融機関での手続き、施設入所の申し込みや契約など、ケアマネジャーでは代わりにできないことがあるからです。
お願いしても、すぐには帰省できないご家族もおられます。
以前の私は、「どうして帰ってきてもらえないのだろう」と思うこともありました。
しかし、家族を介護する立場になった今は、その背景にある事情を想像するようになりました。
仕事を休めない。
遠方で簡単には帰れない。
体調に不安がある。
そして、家族だからこその複雑な関係や、長年積み重ねてきた思いがあることも少なくありません。
家族だからといって、いつも良好な関係とは限らないのです。
それでも、離れて暮らす親を気にかけながら、自分自身の生活も守っていかなければならない。その両立は、想像以上に大変なことです。
ケアマネジャーになって27年、多くのご家族と出会ってきました。
そして今は、介護をする家族の一人として思います。施設に預けることは、介護を手放すことではありません。
介護の形が変わるだけです。
目に見える介護は職員さんにお願いできても、親を思う気持ちや迷い、葛藤はなくなりません。だからこそ、ご家族にも「頑張っていますね」と伝えられるケアマネジャーでありたいと思っています。

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